大桑村の農地のこと

調査報告

 人口減少が想定を超えて(*1)進んでるなかで、田んぼに代表される大桑村の農地ってどうなるんだろうって不安になる。そもそも自分も耕作していない耕地を持っているし、後継者も居ない。周囲を見回しても自分が特別とは思えない。そこで大桑村役場が公開している統計情報を基に農地の事をいろいろ考えてみた。
*1: 2020年の国立社会保障・人口問題研究所の令和2(2020年)の人口推計は2,314人(*2)だったが、令和5年(2023年)の人口推計は2,223人(*3)で、僅か3年で2020年の想定を91人も上回る推計となった。
*2: 大桑村まち・ひと・しごと創生総合戦略 P17
*3: 都道府県・市区町村別の総人口 結果表1

 大桑村の2023年度の統計情報を見てみる。まずは農家数と農家人口だ。この統計は5年ごとに行われている国勢調査に基づいてまとめられているようだ。なので、最新のデータは最も最近に国勢調査が行われた令和2年、つまり2020年のものになる。どうやら、2020年(令和2年)の国勢調査ではそれ以前の国勢調査とは農家の分類方法が変わったようで、この年から、主業農家、準主業農家、副業的農家、自給的農家の4分類となっている。

新しい分類の定義を調べると以下のようになっている。出典は農林水産長の用語ページだ。

主業農家:農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、調査期日前1年間に自営農業に60日以上従事している65歳未満の世帯員がいる農家。
準主業農家:農外所得が主(農家所得の50%未満が農業所得)で、調査期日前1年間に自営農業に60日以上従事している65歳未満の世帯員がいる農家。
副業的農家:調査期日前1年間に自営農業に60日以上従事している65歳未満の世帯員がいない農家。
自給的農家:経営耕地面積が30a未満かつ調査期日前1年間の農産物販売金額が50万円未満の農家。

つまり、主業農家と準主業農家は農業所得で分けられていて、これらの農家と副業的農家とは65歳未満の農業従事者の有無で分けられている。65歳以上だから現役引退ってことで(つまり年金受給者ってことで)副業的って呼ぶんだろうか?いずれにせよ、副業的農家には65歳未満の同居家族がいない、つまり後継者が居ないわけだ。そしてその数は大桑村で82戸もある。2040年の大桑村の農地を考える上でこの副業的農家の今後に注目が集まる事になりそうだ。ここのブログでは、自給的農家以外の農家は農業により所得を得ているという意味で経営農業体(個人経営体)という分類にあてはまると思うが、このブログではこれらの農家を経営農家と呼ぶことにする。この経営農家の戸数は主・準主業農家20戸と副業的農家82戸の合計102戸で、農家全体の44%になる。一方自給的農家戸数は129戸で全体の56%になる。

さて、令和6年4月25日発行の大桑村議会だよりによると、坂家議員(現大桑村長)の一般質問「大桑村の農業の現状と農業経営の特徴は」に対して行政は以下の回答をしている:
「兼業農家の80%に65歳未満の後継者が居ない」
ここで、兼業農家は主業農家以外の、自給的農家も含むすべての農家を差していると解釈すれば、自給的農家のみに注目しても自給的農家のおよそ80%にも後継者が居ないと言っても良い。ここで「言っても良い」としている根拠は以下の計算による。

 兼業農家の8割には65歳未満の後継者がいない。つまり2割には後継者がいる。兼業農家数が準主業農家16戸と副業的農家82戸と自給的農家129戸の合計(主業農家を除いた農家数)だと仮定すると兼業農家数は16+82+129=227戸、この2割に65歳未満の後継者がいるわけで、65歳未満の後継者がいる戸数は227×0.2=45戸、そもそも準主業農家16戸には65歳未満の後継者がいるからこの16戸を除くと残りの65歳の後継者がいる農家(副業的農家と自給的農家)は45-16=29戸。でも、そもそも副業的農家には65歳未満の後継者が居ないから、この29戸は全て自給的農家129戸の中にいることになる。そして自給的農家で65歳未満の後継者がいる割合は29÷129×100=22.5%。つまり、自給的農家で65歳未満の後継者がいない割合は100-22.5=77.5% となり、およそ80%というわけだ。戸数にして129-29=100戸程度に65歳未満の後継者がいない計算になる。

 ということで、ここまでをまとめると、全ての副業的農家82戸には65歳未満の後継者はおらず、自給的農家のおよそ80%の100戸程度にも65歳未満の後継者が居ないことになる。戸数にして合計182戸、何もしなければ2040年にはこれら農家の耕作地は全て未耕作地となる可能性がある、ということだ。182戸は農家戸数全体231戸の79%だ。つまり、農家数が79%減少するということになる。

 さてさて、そもそも今の田んぼの中には休耕田もあったりするけどれど、現状はどうなってるんだろう。これも村の統計でみることができる。

 2020年(令和2年)では経営農家、つまり農業経営体(自給的農家を除く農家)は水田総面積37haに対して稲作をしているのは18h。つまり水田の49%でのみ稲作が行われている。残りの51%は何か別の作物を育てているか、休耕田になっていることになる。普段感じているよりも多い印象だ。

 米の場合、作付面積の合計が統計情報に載っている。「主要農作物の推移」がそれで、令和2年では50haで米の作付けが行われていたことがわかる。この面積は大桑村の全農家の水稲栽培面積だと考えられるので、このうちの18haが経営農家の作付けで、残りの32haが自給的農家の作付けと解釈できる。

この経営農家と自給的農家の稲作面積の内訳比率をグラフにまとめてみると以下になる。経営農家36%に対して自給的農家64%となっている。この比率は農家戸数内訳の比率、経営農家44%、自給的農家56%と大きく違わない。というのも一桁目を四捨五入すれば、いずれも4割対6割の比率になるからだ。仮に経営農家も自給的農家も農家あたりの稲作面積がほぼ同じであれば、それに農家戸数を掛けた稲作面積合計も同じような比率なる。つまり、経営農家も自給的農家も農家当たりの稲作面積はそんなには違わないということ示唆している。

つまり、農家戸数が79%減少すれば、稲作面積も79%程度減少する可能性があることになる。。そんなにそんなに稲作面積が減ってしまったら別の作物を栽培する目処が立たないかぎり、非耕作地が広がることになる。稲作面積が79%と減ったとすると残った稲作面積の推定値は以下となる。
50 × (1-0.79) = 10.5ha

一方、主要農作物の推移(上の表)によれば、米の作付面積は令和3年の50haから令和5年の42haへと2年で8haも減っている。率にして (8÷50) × 100 = 16%の減少だ。仮にこのペースで今後も米の作付面積が2年ごとに減っていくと仮定すると14年後の稲作面積の推定値は以下になる。
50 × (1-0.16)の7乗 = 14.8ha 

このふたつの推定値から、2040年の稲作面積は10haから15haの間くらいになる言っていいだろうか。

とにかく65歳未満の後継者が居ないことがこのような状況推定になってしまう根源だ。悩ましい。。。。

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