調査レポートNo.1 下水道について

調査報告

この調査の目的

下水道施設は計画当時の人口を基に設計されています。人口が減ってもシステム全体を縮小することが困難な施設です。現在運用されている下水道施設を知る事は、将来の人口減で直面するであろう課題の予測に繋がります。

調査結果

大桑村の下水施設の概要

大桑村には3つの下水処理施設、北から須原浄化センター、長野浄化センター、野尻浄化センターがあります。それぞれ、須原・和村地区、大島・東・西・中・弓矢地区、野尻地区の下水を浄化処理しています。

下水サービスを利用している各家庭の下水はいずれかの浄化センターに送られています。大桑村の浄化センターには農業集落排水施設(農林水産省)と公共下水道施設(国土交通省)の2種類が設置されており、須原・長野は農業集落排水施設、野尻は公共下水施設になります。以下の地図でそれぞれ須原・長野地区は緑色、野尻地区は朱色で対象地域が色分けされています。

農業集落排水事業について、農林水産省はその目的を以下の通り説明しています。
○ 農業集落におけるし尿、生活雑排水などの汚水等を処理する施設の整備により、農業用用排水の水の汚濁を防止し、農村地域の健全な水循環に資するとともに、農村の基礎的な生活環境の向上を図ります。
○ また、処理水の農業用水への再利用や汚泥の農地還元を行うことにより、農業の特質を生かした環境への負荷の少ない循環型社会の構築に貢献します。

須原浄化センターと長野浄化センターはその規模等から農業集落排水として設置されました。

施設概要データ(2024年3月現在)
各浄化センターの使用開始:須原 2001年、長野 2000年、野尻 2003年
下水管路延長:48km(自然流下 43km、圧送 5km)
計画処理人口:3,382人(農業集落排水 2,182人、公共下水 1,200人)
処理区域内人口:1,018世帯 2,413人

下水道料金
下水道使用量(㎥)は上水道使用量と連動しています。
一般(税込):
基本料金 10㎥まで 2,090円、10㎥超過分課金 209円/㎥
営業(税込):
基本料金 10㎥まで 2,200円 、10㎥超過分課金 220円/㎥

最新の料金は大桑村公式ホームページを参照してください。

下水処理の仕組み

下水は高低落差で流すので、その仕組みは簡単な様でかなり複雑です。本管よりも低いところの住宅排水はマンホール内のマンホールポンプで本管まで吸い上げています。つまり、このマンホールポンプが停止するとマンホールから汚水が溢れる危険があります。長期にわたって継続的な点検・保守が必須で規模縮小が困難な仕組みです。

須原浄化センターを例に概要を説明します。須原浄化センターに接続する下水管路には23基のマンホールポンプがあり、24時間365日稼働しています。このマンホールポンプの設置場所はマンホールポンプ制御盤を見つけることで分かります。基本的にマンホールポンプ制御盤の比較的近くにマンホールポンプが設置されているマンホールが見つかります。

マンホールの中にはマンホールポンプが設置されています。マンホールポンプは常に運転しているわけではなく、マンホール内の水位が一定量を超えた場合に下水本管へ送水を行います。マンホールポンプは2機設置されており、お互いの累積運転時間が同じになるように切替を行います。また、異常水位を検知した場合は2機同時に運転し緊急送水を行う仕組みになっています。家庭などからマンホール内に流入する異物はマンホールポンプの故障を引き起こす危険性があります。

マンホールポンプに異常が発生した場合は、制御盤ボックス上部に設置されているパトランプが点灯すると同時に、通報装置を使って役場にその発生を伝達します。

須原地区の下水は須原浄化センターに送られます。浄化センターは基本的に周辺地域の中で最も低い土地に設置されます。

浄化センターに送られた排水は粗目スクリーン(フィルター)で大きなごみを取り除きます。その後、沈砂槽に送られ砂などの異物を取り除いた後、破砕機を通して排水中の異物を粉砕します。その後、極細目スクリーン(フィルター)を通して、細かな異物を取り除きます。このように各工程で異物は取り除かれますが、マンホールポンプ同様に、想定外の異物が排水に混入することは浄化システムの故障につながるので家庭からの排水には十分に留意する必要があります。

この後の行程では微生物による有機物分解を行い下水を処理し、沈殿槽にて汚泥と上澄み液を分離します。

上澄み液は消毒槽にて消毒処理後に木曽川に排水します。

汚泥は木曽広域連合環境センターの汚泥集約センター内の処理施設で処理します。

わかったこと

村の人口が減ることで下水を利用する世帯数が減り浄化処理する排水量が減ったとしても、浄化システムの規模を縮小することは難しく、システム全体を浄化センター開設当時と同じ規模で運用し続ける必要があります。また、数多くのマンホールポンプが排水をポンプアップしているので、異物を下水に流すことはマンホールポンプの故障、更には浄化システムの機能不全を引き起こす危険があるとともに、浄化システムの耐用年数を短くする恐れもあります。

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